STAFFのおはなし VOL.2
  • COLUMN

植物を上手に育てられる人のことを、「みどりのゆびを持つ人」なんて呼ぶことがあります。私の母もそんなひとりで、私が幼い頃からたくさんの植物をいきいきと育てていました。

庭では春は球根が芽吹き、夏にはハーブが茂り、オールドローズが咲きました。秋には野ブドウやヒメリンゴも宝石のような実をつけました。水やりの加減が難しいベゴニアが幾鉢も窓辺で朝日に輝いていたのを思い出します。水やりや草取りのお手伝いをして、植物をいつも近くに感じていた子ども時代でした。

そんな私が子どもの時に読んで以来、ずっと大切にしてきた『みどりのゆび』という本があります。主人公のチトという少年は、“みどりのゆび”を持っていて、自分が触れた場所に彼が思い描いた植物を根付かせることができるのです。

貧困街、病院、戦場…、人間の心に寂しさや悲しさがうまれるような場所を、一夜にして緑や花でいっぱいに埋め尽くし、チトは人々の笑顔を増やしていきます。最終的にその力で、国同士の戦争まで辞めさせてしまうから驚きです。

植物で世界を平和にするのは、もちろん簡単にできることではないですよね。でも、このお話は、植物はそんなことも可能にするすごい力と可能性を秘めているんだよ、とファンタジーの優しい世界のなかで教えてくれます。登場するさまざまな植物の名前にも心がわくわくと躍り、想像力が広がります。

みどりのゆびといえばもうひとつ、映画『グリーンフィンガーズ』も思い浮かびます。英語で『green fingers』は、天才ガーデナーのことを指しますが、この映画に出てくるガーデナーは刑務所の囚人たちなんです。最初は「植物なんて育てられるか!」と息巻いていた囚人たちが庭づくりにすっかり魅了され、イギリスの有名なガーデニングショーを目指す姿をコメディータッチで描いていきます。

いかつい男の人たちが植物という命を育てる喜びに目覚めていく様子は、見ていて心がほっこりと温まります。なんとこれが実話に基づいたお話というのでびっくりです。なんとなく落ち込んでいる時や元気になりたい時、これを観ると前向きな気持ちにさせてくれる素敵な映画です。

光のなかで、お店の植物はそれぞれ美しいみどりの葉を揺らしています。お店から巣立った植物が、ひとりでも多くの人の笑顔に繋がればいいな…。

“みどりのゆび”を目指すスタッフたちは、今日もせっせと植物のお世話に励みます。

writer:Mari Ohki