福井瑞紀 個展

2022.07.24

福井瑞紀 個展

『昨日を見る』
2022年7月23日(土)〜8月2日(火)
gareco NAGOYA

gareco では初めての発表となります。額に納められた習作「記憶のスクラップ」シリーズが、ひとつひとつ箱から登場する度に、洗練された美しい素材やディテール、その儚い佇まいに息を呑んでしまうほど、細部にまで作家の表現が感じられます。

作品は布を染め、それを絵を描くように構成しています。染められた自然の模様を利用するのではなく、その絵を描くために、緻密に計算され染められた布を構成する工程は、作家にとってはキャンバスに絵の具の載せるよりも、その素材感や風合いがしっくりくるそう。ぜひ実物を近くでご覧いただきたい作品です。

〈作家ステートメント〉
昨日を見るー
ここ数年で長年親しんできた日常が大きく揺るがされる出来事が続き、制作活動とそれ以外の日常の関係を見直すきっかけになった。気づいてみれば、切り離して考えていた二つの営みは切り離す必要などなく、どちらも私自身がその時その時の環境に影響されながら選んだ糸を右へ左へ編み込んだものなのだった。今という模様は目の前の過去を編み込んでできたものであり、見えない背後に続く未来という模様は必ず現時点での模様の影響を受ける。「記憶のスクラップ」は、目の前に広がった過去の模様を読み解くために始めたシリーズである。

主に自ら染色した布を縫い合わせた作品を制作している。絵の具と違い厚みや筆致を残さず色彩だけを染み込ませた布を縫って表面を整える方法は、あらゆるものが醜く生臭い部分を人目から隠して表面を整えているこの世界のようでもある。