伊藤里佳・三木瑠都 展覧会

2024.06.18

伊藤里佳・三木瑠都 展覧会

「パイナップル会議」
伊藤里佳・三木瑠都
2024年6月18日(火)〜7月9日(火)
*6月20日(木)お休み
gareco NAGOYA

過去にもそれぞれが展示をしてくださっている伊藤さんと三木さんの二人展。二人展といっても、それぞれの作品を並べるわけではなく、二人でつくった作品を展示しています。

普段、伊藤さんは版画、三木さんは絵画を制作しています。伊藤さんの刷った版画に三木さんが筆を加える。三木さんの描いた絵に伊藤さんが加筆する。そんな風に画面のうえでのキャッチボールが作品になっています。

違和感なく混じり合った作品は、お互いを肯定しあい気持ちよくつくられていることが感じられます。

◻︎伊藤里佳 Licca Ito
2018年頃のことか。出産を経て体を崩し社会からも隔離されているように感じ、なかなか自分の作品に向き合えずモヤモヤしていた頃、往復書簡のように絵を誰かと交換してやり取りができないかを考えた。誰でもお願いできるわけではない。絵を描くことが好きな人でためらいなく私の絵の上からイメージをかいてくれそうな人、私のアイディアを面白そう!と肯定して楽しんでくれそうな人….るっちゃん(三木瑠都さん)の顔がうかんだ。相談すると快く引き受けてくれて、るっちゃんの描きかけの絵と、なんとなく完成されていないと感じる私のドローイングのようなモノプリントの版画を数枚交換した。
それからなんと5年あまり、私たちはお互いの絵を交換したまま月日が過ぎ、2024年の初春にやっと重い腰を持ち上げて自分たちの交換した絵と対峙し、熟成された作品に筆を入れたのだった。お互いのアトリエに訪れ、合宿し、制作した。一緒に近所にクロッキーに出かけ、同じものをみて感じたことを画面にのせあって、共同制作もした。凝縮した時間の中でアドレナリンが出ているのか、私たちは無敵状態だった。
るっちゃんの作品についてわかったことは、絵に出てくる不思議な形のものは現実に存在するもので、割と素直にそこにある風景を描いていたのだということ。彼女のフィルターを通すことで空間や建物が不思議なものになる。一緒に制作しているときは、画面というものを改めて意識した。どこに何をどんなふうに描くか。お互いのイメージを言葉にしながら二人で制作できたのは、ワクワクしたし貴重な体験になってリフレッシュされた。(水道管を掃除して水がよく流れるようになるイメージ!)
今、この歳だから共有できたこと、るっちゃんとだから感じられたこと、共同制作を通して自分を見つめなおせたこと。宝物のように大事にしてまた自分の制作に戻りたいと思う。

◻︎三木瑠都 Rutsu Miki
今年の春手前、渥美半島にあるアトリエに伊藤里佳さんがやってきた。私たちは共同制作のモチーフ探しのため連れ立って外に出て、目に映るモノの側面をかたっぱしから取り上げ話し合っていった。
海岸線と砂浜を見下ろす場所に来た時「ねえ、あれパイナップルが会議しているみたいじゃない?」彼女が何気なく指差して言った。私の場所からはよく見えなかった。砂浜まで下りてようやく理解した。ほんとうだ。パイナップルの会議だ!近づいてじっくり見ても、薄目に見ても、それは紛れもなくパイナップル会議だった。
5年前に交換した途中作品に手を入れることから始まった今回の共同制作。北京から帰ったばかりの時期に描いていた少し暗い絵の中に、テキスタイルのパターンのような底抜けに明るい里佳ちゃんの筆が入ったり、版画の余白にはみだして私が油彩ドローイングで続きを描いたり。
それからキャンバスを並べて新作をつくりました。お互いのアトリエを行き来し、画材とモチーフを共有し短時間で決めていく作業は、外で歩きながら話すような、軽やかさに満ちていました。それと同時に、経過した時間の重さが絵の中で共存していることの不思議な感覚を味わってもいました。
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